少年は自由だった/小卒
小学生の僕
真夏の昼下がり
祖母の家で寝ていた
自由人の昼寝だ
窓を開けて寝ていた
網戸を閉めて寝ていた
虫に食べられないように
思い出したかのように降ってきた
雨の音を聞いていた
トタン屋根に打ち付ける
雨の音を聞いていた
古い音がする
優しい香りのする音だ
揺り籠に揺られていた
雨の揺り籠に揺られていた
夏休みのど真ん中
揺り籠の中にいた
夏休みの宿題の
十ページくらいを開いたまま
涼しい風が吹いていた
道路の匂いを乗せて
涼しい風が吹いていた
僕のために吹いていた
少し寒くて少し寂しくなった
あの日あの時あの瞬間
確かに僕は 世界中の誰よりも自由だった
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