ひっそりと 過ぎ行く光/むっちゃん
 
秋晴れの午後 カメラを下げて ぶらりと 初めての下町へ

坂を上がり 狭い路をぐるぐる ようやく辿り着いた 海に近い丘の上

タイムスリップした様な トタン屋根の集落 周囲の家は新しいのだが 

お寺の墓地がやけに高く見える ここだけ 平屋の継ぎ接ぎだらけ 空き地が目立つ

猫がやたらと 歩き回り うるさく鳴いている 飼い主のおばさんが叱っている

土に埋もれたバイクが 野草の中に つる草に絡め取られた 自転車 薄暗い路地

藪蚊がすぐに 襲いかかる ぬかる路に 解体後の瓦がウロコの様に続く 

人影は無いが 息づかいがする家並み こまやかな佇まいに 昭和のかび臭い空気
[次のページ]
戻る   Point(8)