冬の便り/立見春香
 


立っている
緑の丘陵の木の下に
落ちた葉っぱが風に舞う

どこからか聴こえてくる
ギターの練習のメロディー
ほんのすこしだけ
オレンジの香りがする

どの山から舞い降りてきたのか
真っ白な世界に住む鳥よ
その美しい羽ばたきが
わたしを子どものころに
帰してくれるみたいだ


あの少年の
涙をきっと見た

わたしには
なにもしてあげられないのに


そんななかでは
神様に祈ることだけが
やってはいけないことだと知る

山の中で
冷んやりとした湧き水が
滝の水の流れに変わる
ほんのりとオレンジの香りがする
それは夕日の色にかぎりなく近い
オレンジ色をした
オレンジの香りだったのかもしれない






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