夜が歌ってくれる/水宮うみ
 
虫の声。車の走る音。飛行機の音。犬の鳴き声。
そういったものが、夜に静かに溶けてゆく。
僕の体も溶けていって、夜の一部になったみたいだ。

夜は、歌を歌ってくれる。誰も知らない声、誰も知らない言葉で。
その歌に耳を傾けるとき、僕の体はなくなって、
心だけの生き物になる。
言葉の意味は分からないのに泣きそうになる、
真っ暗なのに明るい気持ちになる、そんな歌だ。

夜はやがて明けて、朝になるけど、
夜の歌がいつだって、心のなかにいてくれるから、
今日も頑張って会社に出勤する。
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