無の世界/卯左飛四
 
ンを引くために

再び私に闇が戻ってきた
とてつもなく惨めな気持ちになって
いくばくかの涙を流したようにも思ったが
その涙も存在しなかった
何もない
すべては無なのだから

そのうちだんだんわかってきた
「無」がどれほど楽かということを
今はこの無の状態を案外喜んでいる
喜ぶという感情も存在しないから
これはいったい何と表現したらいいのだろう

いや、何もない
何も考えなくていい
最後の扉が閉じられた今
肉体も精神も
すべてはまやかしに過ぎない

ねぇ
今、あなたが開いているその本の中に
私はいますか?

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