すれ違い/アマメ庵
 
なった
とらりの山が見えるようになり、また見えなくなり、それでも少しづつ雲が払われて行く様だった
登って降りて、しばらく歩いて、
彼女が山頂の方を気にしていることが、気にかかった

彼女はほんとうは、登ろうとしていたのではないか

彼女は登ろうと、私は下ろうとしているときに偶然行き合った
そして行動をともにした
何となく、彼女は言い出せないでいるのかも知れない
またしばらく歩くうちに、疑念は確信に変わる

彼女は登ろうとしていたのだ
私は、登れるだろうか
きっと登れる
一度はあの峰に立ったのだから
簡単なことだ
彼女の手を引き、また登る
行きたいところに誘い、そして今度こそ一緒に降りれば良い

しかし、体力と気力とが私をためらわせる
私と言い出せず、歩みを進める
自ずと山頂は遠のき、やがて戻れないところまで行くのだろう

また一陣の風が吹き、
振り返ってみれば、微かに山頂が見えた

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