闇に在って/木立 悟
わずかに開いた
夜の扉
ふくらはぎを
受信する耳
ふるえ ふるえ
どこか冷たい
縦も横も
どこか離れて
どの扉にも
開けたあとがあり
その幾つかはひとりでに動いて
羽の生えた背中が見える
寄る辺無きものが
土を知らぬ草が
けだものの脚を洗い
冷たく在りつづけている
ひとりめのけだものが吼えると
ふたりめから後はいなくなり
けだものはひとり
焦土にひとり
密生した枝葉のなかの
枯れた数枚が風に揺れ
鳥に震え 鳴きながら
午後に影を曳いてゆく
蜘蛛の巣に覆われた窓の隙間から
血と星
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)