影をひく、日向にぬかる/吉兆夢
髪の毛の抜ける軽さで舞いあがったビニール袋が
ハの字に並んだ社宅のあいだを海溝にして見えなくなる
溶断した五線譜に置く
冷えた喧騒のフェルマータ
胸底のゲル状濁点や句点硝子の乱濁流を
込み上げるまま声にするにはあまりにそらはすきとおって
(かたむいていくあきのひあしにあめさえひかってみえるから)
俯いて引き剥がした
ぬかるみに歪な轍を残して
いつものようにペダルが回れば、この目はまた乾いていられる
だんだん縞の木洩れ日を抜けて坂道をくだっていく
瞬間だけわたしは風になれる
はるかにかすむ空想都市や遠いビニールハウスの反照を
腕いっぱいに抱
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