春のきまぐれ/本木はじめ
ラビアでノアの箱舟掘り起こす天気雨にも恐れ慄き
知恵の実の遺伝子だけを吐き出して楽園目指す少年少女
長過ぎるもしくは短すぎるこの人生すべてを夢見るうたた寝
弓使い林檎を頭に載せたイヴの背後に蠢く蛇を狙って
洪水の干いた岩場に耳を出すうさぎの瞳の薔薇色の赤
かたちあるものはいずれは溶けてゆく働き蟻が見たチョコレート
平泳ぎで世界一周してみようあんた前世は蛙だ絶対
探してる森で出あった美しい蜘蛛の巣越しに見えるきみの手
血は乾きひからびてゆく液体であったころとは違う温度差
祖母たちの昔話を聞くときの姉と弟おなじ仕
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