春のきまぐれ/本木はじめ
線路上手をつないでゆく少年と少女の行方を追い駆ける冬
首都高を走るひかりをずっと見るまるで消えゆく希望みたいに
あこがれの先輩卒業した春の部室にひとつ残るメガホン
焦げているフランスパンに耳はないピカソの描く無音のセーヌ
ことなかれ主義ですもうね眠いんです五億年ほど眠らせとくれ
ある晴れた春の日転校した友にもらった宝を埋めた雨のその夜
たそがれのいろを問われてたそがれるあなたのいろが侵されてゆく
ノルマンディー上陸数分前の砂浜に生まれるウミガメは比喩
穏やかな春の陽射しの降り注ぐ山を切り取る教室の窓
アラビ
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