わたしはあの日けものだった/やまうちあつし
一面に
星がばらまかれていた
言葉をなくした
故郷をなくした
わたしはあの日けものだった
いいや本当はきくらげだった
吠えることすらできなくて
ぷるぷるふるえていた
けれどもそれも
すぐに忘れる
〈頭がちょんぎれたような
ひどい物忘れだ〉
それぞれの暮らしがあって
それぞれに家族があって
それぞれに事情があって
それぞれの時間があって
君のことなんか忘れた
しあわせになりますか
しあわせになれますか
しあわせになりたいか
しあわせにならないと
いけない
どこへも
いけない
君のことなんか
忘れたい
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