静かな電話/水宮うみ
彼は世界一静かに電話をかける。
彼が電話をかけるとき、何故かコール音も小さくなるので、ほとんどの人は、彼から電話がかかってきても気付かないだろうと思う。
だけど、わたしは電話に気付いた。ずっと耳を塞いできたわたしの心は、何故だか彼の声には耳を傾けた。
彼はわたしの心に世界一静かに電話をかける。
悲しみのなかで、夢のなかで、わたしと彼は話をした。
他愛もない、愛らしい話ばかりをした。例えば、無音より優しい音楽について。なぜ大切なのか分からない、大切な思い出について。なんだか眠れない夜の、楽しい過ごし方について。
騒々しい世界で生きていくことへの絶望が、彼と話すと和らぐようだった。彼の静か
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