砂/石村
 


うつくしいひとたちに遇ひ

うつくしいはなしを聴きました

空はたかく 澄んでゐました

かなしみはもう とほくにありました

よろこびは すぐそばに そして

手のとどかぬところに 水色の

雲のやうに やさしげなものとして――

妹たちは なくなつた ふるさとに

かへつていくでせう 今夜の

古い夜汽車で 行李いつぱいに

夏草と蜜柑の想ひ出をつめて

さやうなら また来るね さう

告げた しゆんかんに

わたしの後ろで 星が 砂になりました

さらりと きえていきました――

    (二〇一七・十・三一)

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