その振動が記憶している/ホロウ・シカエルボク
 

洞穴を突き抜ける風が立てるような轟音がずっと聞こえていた。日中ずっと度を超えた太陽に炙られ続けて乾ききった身体のせいかもしれない。あるいはもっと他のなにか、もっと根の深い―ウンザリするような原因があるのかもしれない。でも差し当たりそれは、「夏のせい」にしておいても問題はなかった。問題があるとしても、今日のことではないだろうということだ。遠い過去にどこかで、そんな音を聞いたことがあるような気がした。でもそれが果たしてどこでのことだったのかはしばらく考えても思い出せなかった。現実のことではないのかもしれない。おぼろげなイメージ…あるいはそういったものに変換されたまるで種類の違う出来事―そういう類の
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