鮮やかな流血のまぼろし/ホロウ・シカエルボク
はなかった、アメーバのような表面はあまりにつかみどころがなくて…俺の意識など侵入する余地もなかった、俺はため息をついてこめかみを一度殴る、それはゴム板を殴るような感覚に阻まれる、畜生、俺は口に出してそう言う、これは蝕まれている―本当にはそこに在るはずのない―流れているはずのない血液に阻まれて…この血は何処から流れている?何が失われようとしている?幻想の血を流し過ぎて死ぬと、それは失血死になるのだろうか?答えはない、そんなもの初めから判っていた、疑問符なんて退屈しのぎの雑誌のようなものだった、たとえば運命や、宿命やなんかが、そんな声に応えてくれるなんて思ったことは一度もなかった、俺は壁にもたれて座っている、血が流れ続けている、いつかこの血の海に引きずり込まれて、俺の存在は失効されてしまうかもしれない、もう一度血を拭おうとしてみる、当たり前の皮膚の感触だけがそこにはあった、在る、無い、出鱈目な実感が視界を朦朧とさせる、そうだ、この血は、確か―
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