鮮やかな流血のまぼろし/ホロウ・シカエルボク
脳髄を満たし、頭蓋骨をなぞるように流れ落ちる観念的な血液は、ジェルのような生温い感触を塗りつけながら、といってもはやこの肉体にはどんな未練もないというように潔く落ちて行った、それはいつか精も根も尽き果てた恋人の、素っ気ない背中によく似ていた、空調の不自然な冷たさ、それは俺にモルグを連想させた、それは予兆なのか、それは…悪魔憑きのようにやつれた目を見張り、手元に転がっていたペンの先で手のひらを軽く刺した、それにはどんな効果も期待していなかった、ただ意識がまだ現実の線上にあるのか、それを確かめてみようと思っただけだった、果たしてそれは確かにまだそこにあったし、幻覚のようなそれを除けばたいして不
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