人工(じんこう)ピンクス/河野宏子
 
今朝すれちがった女の子のビニール傘の
持ち手の色は雨の街に浮き立つ人工ピンク
沈むことのない色をのせてまわる世界で
雨にも負けズ人類は渇く

ピンクというのはなーんか迷っている色
赤と白の中間にいる色
生まれてきたのと死んでしまったのとの境目
生殖できます、のしるし総天然ピンク

スマートな交配のための個体差
それぞれに違うはずのピンク
でもパッケージは似てるほうが人気、迷うから。

王子様たちは魔法が使えないので
100円ライターを手に
ラブホの片隅で乾燥した愛を燃す
どの個室も同様にボタンだらけ

朝になったらまた
コンビニ・売店で
人工ピンクス

今朝すれちがった女の子のビニール傘の
持ち手の色は雨の街に浮き立つ人工ピンク
沈むことのない色をのせてまわる世界で
雨にも負けズ人類は渇く
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