暗い風/大覚アキラ
 
よりにもよってこんな冷たい風が吹く日に
おまえはどこかへ行ってしまった
どうせならもっとカラッと晴れた日か
土砂降りの日を選んでくれれば
おれはただバカみたいに泣いて
それで何もかもおしまいにできるのに
こんな冷たい風が吹いてるもんだから
おまえのことが気になって泣くどころじゃない
きっと
おまえの薄手のカーディガンの隙間から
冷たい風が滑り込んできて
おまえは衿をたぐり寄せるようにして
暗いほうへ暗いほうへと
背中を丸めて歩いて行くんだろう
もう決して手の届かない
どんな大声も届かない暗いところへ

せめて風よ
吹くな
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