まだ、だれもみたことはない/ホロウ・シカエルボク
はみんな、どこかでそんなおしまいをうらやんで
二十五時間ほどの不眠はどこかほっとするような残酷な幻覚をむかえいれて
ねえ、つぎはわたし、つぎはわたしと
必要以上に鋭利にとがれた刃物がまわってくるのをまっていた
いったいだれの喉笛を切り裂くつもりだったのだろう
午後のあいだずっとかんがえていたけれど
ざんねんながら思い出すことはできなかった
雨がふりだした瞬間にはいつだって
べつの世界がうかつに顔をのぞかせたような気がするものだ
レインコートの感触にうんざりしてうつむきながらも
いつかその世界が
わたしを飲み込んでくれないかと心待ちにしているおろかもの
退屈そうにしているあなた、ひとつだけおしえて
―朝はまだですか?
夜の荒野はみわたすかぎりの空虚で
どれだけ目をこらしてもだれもやってくることはない
わたしはそんな場所で、いつも
じぶんだけの音楽をくちずさんで朝をまっている
いっしょに、いこうよ
ほんとうの朝はとてもまぶしいんだってさ
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