まだ、だれもみたことはない/ホロウ・シカエルボク
あなたがわたしにかなしい場面をなげつけるように
わたしは少数のともだちの手をとって
はるかなうつくしい景色につれてゆこう
靴底はピアノソナタの砂をふみ
風は弦楽四重奏のようにしずかに吹くだろう
かたづけられたテーブルのすみには
白紙の便せんだけがおかれている
いちどはだれかがなにかを綴ろうとこころみたみたいに
たよりない表紙はおれてめくれている
そこになにかがあった
ふるい木枠の窓のむこう
軒先には蜂の巣
むらがって、さわがしく
乱暴なリズムがたえずくりひろげられる
それは地下鉄のホームととてもよくにているじゃないか
おしえられたうたをうた
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)