まだ、だれもみたことはない/ホロウ・シカエルボク
 

あなたがわたしにかなしい場面をなげつけるように
わたしは少数のともだちの手をとって
はるかなうつくしい景色につれてゆこう
靴底はピアノソナタの砂をふみ
風は弦楽四重奏のようにしずかに吹くだろう


かたづけられたテーブルのすみには
白紙の便せんだけがおかれている
いちどはだれかがなにかを綴ろうとこころみたみたいに
たよりない表紙はおれてめくれている

そこになにかがあった

ふるい木枠の窓のむこう
軒先には蜂の巣
むらがって、さわがしく
乱暴なリズムがたえずくりひろげられる
それは地下鉄のホームととてもよくにているじゃないか


おしえられたうたをうた
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