彼岸と語る/為平 澪
 
取りたくないもんだ…

緑茶すら啜らず紅茶も飲まず
湯気を立てているものすべてが
冷めてしまったことを私たちは語り合った

凍てつく外界の降りしきる雨に身体を濡らし
実家を後にする叔母の物静かな世間話が
背中に長い独りを見せつける

隣の襖から香るお線香とひしゃげた蝋燭の炎
何人分もの灯火が風雨の強弱に煽られながら
梁の上を越えて昇っていく

私の持つ小さな火も知らず燃え尽き
煙は天井を燻し続けていくだろう

この家の天井に燻りつづけ いつしか
シミのような 大きな黒い顔をして

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