春の記憶/ミナト 螢
出会いと別れの時刻表を走る
駅はいつも出入り口で混んで
感傷に浸る間も無く電車が通り
手紙を書くよという君の声が
今日は何だか良く聞こえなくて
飲み込んだ言葉が胸に刺さり
いつしか抜けない棘になっていく
それが君という証なんだから
ばらを食べたと思って痛みを知る
僕等は同じ小説を高架下で交換した
指先が触れて約束するよ
最後のページまで読み終えること
春の記憶に優しさを混ぜた
君の体は覚えているかな
月の皮が剥けそうな夜
僕は赤いスピンをナイフで切り
君の薬指にリボンを作る
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