陽炎/ホロウ・シカエルボク
 

夜の在りかたはきみを気にしなかった、ただ次第に濃度を増して、それから失くしていっただけだった、きみは寝床に横になってはいたが、まんじりともしなかった、そして、頭の中にあるおぼろげなメロディーについて少しでも多くの情報を記憶から絞り出そうとしていた、夜が明ける少し前から、そのことに躍起になっていたが、一時間経っても二時間経っても情報は更新されなかった、眠っていないせいなのかもしれないし、もしかしたらいつもなら気にも留めないようなささやかな断片に過ぎないせいかもしれなかった、ただ寝床に横になったまま、眠れず、起きることにも踏ん切りがつかないような気分で出来ることといえばそんな記憶で遊ぶことくらいだ
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