線香花火と自由の星/秋葉竹
 
させながら
僕をみあげながら尋ねるのだけれども、
そんな答え、持ってないし、
今夜の線香花火は成功でしたね、と、
猫のふりをやめた
あなたの寂しげな声を聞きながら
だって、人間だもの、って、
なんどもなんどもくりかえすあなたの
おちゃらけた笑顔をそっとぬすみみながら、

僕が、
この猫女、
本当好きなんだよなぁ、って、
好きになるって、理屈じゃなく、
そういうことなんだよなぁ、って、

わかりやすい恋心を披露したところで
死の香りがする線香花火の音が
小さく遠くなってゆき、
もはや消え去る直前に、
もう一度、死の直前の煌めきと
忘れられない真夏の夜空の夢を
僕らのこころにいつまでも
いついつまでも、
灯しつづけてくれているのだろうという、
とても素直なやさしい疲労にくるまれ、
明日へ向かって斜にかまえず、
ただ、小雨のようなおだやかな嘘をついていい
自由だけは、持っていてもいいだろうか?





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