諏訪/形代 律
あおざめ
咳に胸をたたかれ
血が垂れる
効く と言われて
空缶に溜まった何かの肝を
啜れない身が
はたらけばいい
赤い服地をかざすひとにあこがれ
明くる春 山を越えた
紡ぐ糸を切らすたび
不孝だぞ と
ひとりひとり丁寧になぐられる
日々
窓はいつも黒く
地の神さまがわたるという
冬の湖は
淡いむらさきの放射をひろげて
空が
朝へと薄まるのを
かたくなに見ている
進水するひともいた
当日
翌日
氷塊が浮かび
また生えるのではない筈
かべの外
若いあこがれの声がもう
空の色である湖の
千年に比べれば
それでも
土に埋められて
また生えるのではない筈だが
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