平等でない/寒雪
 
上の縁に手足を縛られた、僕の大切な猫が横たえられていた。
愛猫は苦しそうにもがきながら、拘束を解こうと必死になっている。
聴こえてくる鳴き声が、いつも聞いているあの声。
急激に自分に襲い掛かる日常。
今までの結果通り突き落とせば確実に猫は死ぬだろう。
そうすれば自分の命は助かり、晴れてこのキチガイじみたゲームから解放されるのだろう。
なんだかおかしくなって僕は急に高笑いを始めた。
止めようにも止まらないから、笑い声を挙げたまま僕は猫に近づくと、そのまま猫を屋上から突き落とす。
……代わりに屋上から勢いよく飛び降りた。
落下していく中、僕は思った、これでいいのだと。
ゲームの結末は僕の死で終わるが、それがどうしたというのだろう。
そういうことなのだ。
……ここで僕の意識はいなくなった。
聴こえない僕の血まみれの死体に、低い声の男が何か言ったようだが、もうその言葉は僕にとって意味のないものでしかなかったのだった、


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