いったいどうしてこんなことを思い出したりするのかね/ホロウ・シカエルボク
の残骸は、どこで眠っているのだろう、再び立ち上がって歩き出す、時刻は正午になろうとしている、自動販売機で缶コーヒーを買う、すぐに飲み干してしまう、歩道橋を渡る、下らない街のメイン通りの、ほんの少し先が見渡せる、でもその道はどこにも続かない道だ、同じ言葉だけを話す人間が、同じ毎日を、同じように使い潰していく、そうして、出産と葬式だけが繰り返されていく、おれは家に戻る、つけっぱなしにせざるを得ないエアコンに中途半端に冷やされた部屋は不自然だろうか?曖昧なまま進行していく物事たちは正解の感触を残さない、それが正解だと言えばそうなのかもしれないが、おれは例えば三年ぐらいあとになって、今日のことを思い出してこう言うだろう―「いったいどうしてこんなことを思い出したりするのかね」と。
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