いったいどうしてこんなことを思い出したりするのかね/ホロウ・シカエルボク
 

冬のさなかのような目覚めだった、なにか夢を見ていたのかもしれない、その夢が心身を徹底的に凍えさせたのかもしれない、猛暑といえども明けたばかりの朝のなかではその牙はまだ剥き出しになってはおらず、冷汗に濡れた身体は震えが来るほどに寒かった、どんな夢だったのか、あるいは夢ではなかったのか、なにひとつ思い出せなかった、もしかしたらそれは、目覚めと共になかったことにされるほどの嫌悪を自分自身に与えたのかもしれなかった、思い出せない、なのに、身体に刻み込まれた感触はそれがただごとではないのだろうことをありありと語っていた、ベッドから降り、洗面台に向かう、顔を洗い、鏡を覗き込む、少し青白い気がする、だけど、
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