熱き夜に響くは/坂本瞳子
静まり返った真夜中は
墨で塗り潰したような
黒一色の闇が広がる
空の遠く向こうに
冷たい月が仄かな光を
放ってはいるものの
地上のすべては熱気に包まれたまま
静けささえも暑苦しいのに
誰かのクシャミが大きく響く
こだまさえも聞こえている
こんな夜の夜中に
この暑さの中で
一体どこのどいつが
夜道を彷徨いているというのか
ねぐらを探している悪魔が
あまりの暑さにやられて
熱帯夜のど真ん中で
方向を見失ったとでもいうのか
そういうことにしておいてやろう
そんな悪魔を道端で見かけたら
背中に蹴りを思いっきり入れてやるけどな
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