ユウダチ/邦秋
愛するものを愛するだけの時間も無いから起こした夕立ち
重力に素直に流れゆく川を
触れればその水は新しい
雅印が拒んだ、なぞっただけの文字
額縁が冷めた目で見ている絵
今日は何を想って右手は弦をはじいている?
同じ景色の部屋、昨日とは何が変わった?
青い風を切り走れば 服の重さと時の尊さを胸に感じて
愛するものを愛するだけの時間も無い
沈む暇(いとま)も回り道も許されぬから
マフラーも巻かずにオーロラを目指した
狂っていたのは盤面か? 針か?
持ち手には痛まない棘には棘を贈って
電波が飛び交う空から覗き放った「さよなら」
夕立のような亀裂と刹那ささえも
幸せのためには時に必要で
体を流れる赤が濁らぬ様に
古きは捨て新たを産んで真実(ほんもの)に近づく
見えない蜘蛛の糸に張り付いた言葉なら
歩く速度ですらもポケットから落ちていった
振り向かない
洗い立ての心が黒く染まっていたのは
薄い灰が厚く重なっていたから
愛するものを愛するだけの時間も無い
仮面の優しさを断って今貴方のもとから発つ
戻る 編 削 Point(0)