寂寞たるは/坂本瞳子
 
渇いた目が疼く
ほじくり出したいほどに
なにかを言いたげで
鏡に見入って
左側の下瞼の左の辺りを
頬へと向かって三本指で
下げてはみるのだけれども
とくに変わったなにかは
見つかるはずもないといった体で
どうせならば小石の一つでも
出てきてくれようものならば
スッキリしてしまえそうなものを
なんの原因も見当たらず
疼きが解消されることはなく
この不快感は永遠に続くのでは
ないだろうかとさえ思われ
やるせない気持ちが募りもするけれど
ぶつける先も見当たらず為す術もなく
ついでと思って
右側の下瞼の右の辺りも
頬へと向かって三本指で
下げてはみるのだけれども
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