儚い青空/寒雪
無駄に人の肌を赤く塗装しようと
熱い吐息を吹きかける太陽が
まだまだ元気な夏の午後
河原を歩く僕の頭上に
久しぶりに出会った
それはそれは美しい
飾りっ気のない青空が
いつの間にか姿を現した
始めは目の端に入れて
なんとなく眺めている程度
だったが次第に
無視できなくなって
立ち止まってただ
青空をひたすらに見つめる
自分がいた
青空は澄み切っていて
にきびのように
所々白い雲が浮かんでいた
太陽の位置が
感じられない程度に傾いていくにつれて
点在する雲が
増えたり減ったり
形や色を微妙に変えて
僕の目を楽しませる
この青空は
明日はどんな様子を見せるのだろう
もっと雲が多いのだろうか
もっと色が水色なのだろうか
それとも青空は死んでしまって
この世にさよならしてしまうのだろうか
ふと気が付くと
両腕が赤く腫れあがっていた
太陽のせいだな
僕はムルソーを真似て独り言ちた
青空が
笑ったような気がした
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