ラストマン・スタンディング(或いは暴いた繭の中の)/ホロウ・シカエルボク
 
動脈は情け容赦のない撲殺、静脈は金切声、細胞は無感覚なギャラリー、そんな蠢きの夜だった、与えられた寝床は求められたものと決して同じではなかった、湿気が強すぎたし、隣室には他人のものを覗いてばかりいる薄気味の悪い年寄りが住んでいた、そしてエアコンはスイッチを入れっぱなしておかない限りたいして効力を持たなかった、なにもかもが断線しかけたスピーカーみたいに途切れ途切れの音を発して、ところどころ歪んでしまったままプリント・アウトされた設計図を睨んでいるような時間―もっともそれは特別珍しい夜というようなものではなかったし、実際そんなふうに暮れてゆくのが当たり前の毎日だった、なにもかもが歪み切って、腐臭を発し
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