口先だけじゃどうにもならないよ、きみ/ホロウ・シカエルボク
 

綿密に編み込まれた絨毯のように
今夜の気分はどこのどれとも言い難いものだった
沖縄辺りで停滞している台風のせいで
エアコンをつけていてもじめついた部屋だった
アリスが自殺した小僧の尻を叩いているアルバムを流して
クラックのように窓の外で壁を叩く雨の音を聞いていた
いままでに何度、こんな時間の気分のことを書いたっけ?
思い出せないほどの昔まで遡る気にはならず
そう、またひとつ
キーボードが旋律を増やしていく

「詩とは」「音楽とは」などと
まことしやかに語るやつが居る
「わたしはこう思うのです」って程度の話を
まるで絶対的な正解のように
詩は何処にも向かわない

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