さよなら/まみ
あなたは僕を待っていた白いシーツの上で
電話も出来ず声も出ず
赤子の声を嫌い痛みを敵のようにしていたあなたが
ただ僕を待ちながら天井を見つめる檻の中で闘っていた
あなたが望んだ最後の望みは僕と会うほんの砂のような時間
そしたらさよなら
毎日のように触れていた命を失う時
あなたのようになれなかった僕を
じっとあなたは待っていた
きっと想った願いは流れる星屑のようにあったろう
僕が行く前の日まで何の助けもさせず
プライドが杖で引きずるように彼を歩かせた
そして器用だった指で彼女にありがとうとくっきり書いた
僕を見たあなたは自分の人生の中に
混沌とした痛み止めの幻覚と渦の中に
そしたらさよなら
あなたは僕に話しかけた声なき声で
そしたらさよなら
僕が生まれて覚えたあなたは去っていった
叱ったのも褒めたのも
励ましたのも慰めたのも
憎んだのも愛したのも
僕の全てが去るまであなたは終わることができない
そしたらさよなら
僕が僕に言うまで
そしたらさよならってね
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