街のもの言わぬ羽/ホロウ・シカエルボク
 

ある時刻を境に街路は静まり返った、酔っていた連中たちは酔い潰れ、眠るかあるいは死んだ、お盛んな恋人たちは建物の陰でお粗末な絶頂を迎え、指を絡め合ってどこかへ消えた、忘れられた競馬場のナイター設備みたいに点いたり点かなかったりしている頼りない街灯の灯りは、金持ちに群がる乞食のようなもやに取り巻かれて広く照らすことは出来なかった、いま路上をうろついているのは、呑んでいるでもなく、盛っているわけでもなく、いまどうして自分がそこに居るのかも判らない連中ばかりだった、そして俺もその中のひとりだというわけだ、金もなく、着る服もそんなには持っていなかったが今夜はどうしても家に居たくなかった、情けない週末の夜
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