クロニクル/ミナト 螢
間違いだったと気付いた恋が
明け方の空で鳥と鳴いている
声もなく静かに佇む部屋で
指をさすのはあの坂の向こう
木々の枝を伸ばすようにあなたは
たくさんの葉を落として来たんだ
揺れて揺れてひとつになりたい
亡き骸みたいな身体に宿る
情けない程の欲を撒き散らし
長い毛先で心臓を聞いた
愛されることに怯えていたよ
同じくらいの愛を返せずに
小さくなっても消えたりはしない
手と手を渡り歩く温度がある
堂々巡りで破れた手紙が
好きですと伝えた日の笑顔を
そっと優しく包んで抱きしめた
いつか私が落ち葉になったら
あなたのマグカップの下に敷く
コースターになる勇気が欲しい
あなたの顔で頬が緩むような
人生を過ごせば素晴らしいね
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