祖国について/青色銀河団
 
なのでしょう
初恋の水脈ひく影に
蝙蝠傘をさす彼女の朝は美しいですか
背中が輝く幼い日は
もうどこにもありません
十字架ばかりが透明なのです

うたは透明な食卓とともに
さらさら流れ
傍らではだらしない蛇がよろこんでいます


星のように燃える
人間の心は精緻ですか
笑う人ほど静かに悲しみに
沈んでゆくようです

おとうさんのなかの汗がまだつらいのですが
みにくい眠りのまま
郵便の伝言を待っていることにします
倒れる劇をずっと演じていたいのです
それは葬式の蜜柑とナイフの美しさにきっと似ています

指先のオレンジを
いくども飛び散らせる
傷口のためのたたかいなのかも知れません



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