汗かきの午睡/坂本瞳子
 
汗ばんだ背中が気持ち悪い

ふと一滴の汗が首から背骨を伝って腰の方へと滴るのは
なお一層のこと気持ちが悪い

陽の光が憎らしくさえ思われ
湿った空気など蹴散らしてしまえと
誰に言ったものかと口籠ってしまう

風鈴など吹き飛ばしてしまうか
指で弾き飛ばしてやろうか
この手で握りつぶしてしまおうか
そんな妄想が過る
ぬめりとした掌に衝動を抑えられ
滑りやすい腕に諦めを覚える

汗ばんだ足の裏も気持ちが悪い
板張りを素足で歩くたびに気持ちの悪い想いを重ね
項垂れるように寝っ転がって
汗に塗れた背中を這わせて
仰向けに大の字になって
ガーガーといびきをかいて
狸寝入りをしてやろう
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