脱ぎ捨てて/若原光彦
 
わたしの手は
ぱたぱたと飛んでいきたかろう
耳もまた
できるなら連れだちたかろう
あるいは別々の方向へ行きたかろう

肺も海へ行きたかろう
ひがなぷかぷか浮いてみたかろう
臓物どもは川がよいかもしらん
池の水ではあきたらんだろう

ほほや眼のことはわからぬ
やつらは大概むすっとしている
だが顔の総意としては
ぼとりと落ちてしまいたいだろう
こんな主人のもとでやっていけるかと
わたしを懲らしめる暇がほしかろう

みんな
行っといで
こんなことを言ってはいかんだろうかな
すまんがな
行ってらっしゃいな
しばらく
しばらくといわず気が済むまで
気が済むど
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