春、ある冷える足跡/みい
 
からんころん
汗のかいたグラスから、人差し指はねて
眩んだ足元にこぼれた梅のお酒
冷たい床は、春の忘れものさえ 冷やしてゆく

外は雨だった

ぽくぽく と こころが桜の花びらで埋まる
わたしのきもちはここに置き去りにされ
また巡り会うことはもう ない

「少し酔ったの」
そんな言い訳がぴったり似合うだけの
ふわりとした水色のワンピースの中身は
いつも透明のわたしがいた

あの時触れた指でさえ
すべては憶えていないのね
そんな気持ちで歌う帰り道の歌が
きみの居ない明日を 強く想った

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