翻弄/氷鏡
 
世界の苦しみを背負って飛んだ小鳥が地に墜ちていく様を美しいなどと表現できる傲慢さを捨てられないがために自らの口から出る言葉一つ一つが魂の輪郭を歪めていることに気づけていない、因果応報が形になって現れるまでの時間は人に忘却を促すのに十分すぎて自己の存続手段を麻痺させることだけが唯一の安寧として、フィットしない人格が歩くたびに身体を締め付ける、走ったら瓦解した、ばらばらになる感覚を大切にしようと思った、それは最初で最後だったが白と赤とありふれた虚飾を向かい風に受けながら地面を蹴った分の力だけこの世界から遠ざかることができたのだと思う

聾唖者の幸せを知りたい、目に入るなといいながらその顛末を追い、
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