ぼく語と星/若原光彦
 
語で旅がしたい
そしてまずは日本のような旅人にやさしい国へ行こう
そこでぼくに行きたい場所があって
でも道がわからないとしよう
ぼく語の学生は今こそとばかりに応じてくれるだろう
ぼく語を知らない人もどうにか手を尽くしてくれるだろう
人から人へたらい回しにされるかもしれない
通りすがりから駅員さんへ
駅員さんから駐在さんへ
あいまいな笑顔の数珠つなぎが続いて
なんだかわからない車のなんだかわからない席に案内され
だれもがにこにこ笑顔で手を振るかもしれない
なんだかわからないものをさし出され
いいから食ってみろ旨いぞとせかされるかもしれない
不思議なホテルで何泊かするかもしれない
窓からいつか見たような星座が見えるだろう
もしもひとつだけ願いが叶うなら
ぼくはぼく語の制定を望む
歳も遠さもわからないけれど
星の光はぼくにも見える
世界よすまないやさしくしてもらって
ぼくったらいつまでも赤子にすぎなくて
すまない本当にすまない
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