猫次郎/やまうちあつし
助手席に猫がいる
仕事を終えて帰ろうとすると
どこからかやって来て
そこへ座る
猫といっても猫らしくなく
長靴など履いて
シートベルトもきちんとしめる
近くの事務所に勤めているらしいが
帰る方向が一緒なので
便乗させてほしい、という
猫がそんなこと言うなんて、
いぶかしいので戸惑った
何より私は猫アレルギーゆえ
帰りのバイパスでもずっと
くしゃみをしっぱなし、なんてごめんだし
けれども思案する私にかまわず
猫はちゃっかり乗り込んで
出発を待っている
こうしたわけで
助手席に猫がいる
☆
初めのうちは会話もなく
くしゃみばかりが車内に響いた
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