冬と喪心/
木立 悟
針ひとつ氷の辺に立ちつくす
夕暮れに黒の交わる底翳かな
ひたひたと夢の終わりに生える藤
凍る夜と凍らぬ月の影ふたつ
断崖は枯れた蕾の街に咲く
黒よりも深き黒にて黒を喰む
六十夜七十夜まだ春を見ず
水底に空の針刺す皐月かな
けだものの咽に囁く洞月夜
鏡らが鏡を孕む黄道軌
棘に咲く光つらぬき駆ける笑み
白蛇に鉱と穂と羽ふりやまず
懐の十尾のけもの冬を咬む
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