海の向こう/藤沢
 



歯医者で名前を呼ばれるくらいの
スピードで人は死んでるらしい。
赤ん坊は泣きじゃくる。
声が枯れる恐ろしさ知らないのね。

砂を集めても宇宙にはなれないらしい。
君の夢の中で僕は死んでるらしい。
近所の老人ホームから呻き声聞こえた。

テレビじゃ
ライオンの檻
みたいに海の向こうの
こと偉い人が馬鹿に
するんだ知らないくせに
知らないくせに。

嫌いだったビールが飲めるようになった時、
急に君を受け付けなくなった。
細い指で僕を拡散するんだろう。
ルーティーンだと思ってたけど馬鹿らしいね。
家族の形が変わっても愛情は未だ伝わらないもんだ。
生活の形が変わっても生き方はほとんど同じさ。

掌に収まるくらい
しか奪っちゃだめ
って決まりがあればなあ。
愛も命も取り合いにならず
空も海も誰のものでもなく。

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