時の果実をかじる夜/まーつん
一人だけで過ごす夕べには
そんな愛おしさがある
手のひらに収まる位の
小さな、大切な
その、時の実は
昼間、会社で働く私の
苦しさや虚しさを糧に徐々に膨らみ
日が暮れる頃には、プックラと
小ぶりながらも立派に実って
穏やかに波が打ち寄せる
夕暮れの砂浜を背景に
枝の先に揺れている
私はふと気づくと
背広姿のまま
その無人島にいて
ああ、今日もまた
ここに来たなと思いながら
ヤシの木によく似た
黒々と毛深い幹を見上げ
細長い緑の葉を
空に向けて
剣のように尖らせる枝の下
風に揺れる果実を受け止めようと
手を差し出している
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