一人称が決められなかった詩(うた)/秋葉竹
趣味は雲を眺めること。
と公言して、
変人扱いされている
テレビタレントさんがいたが、
ちょっと真似してやってみた。
風が冷たい、名のみの春だが、
川辺の土手に寝転んで、
ぽか〜んと雲を見ていたんだ。
ポカポカやさしく陽は射すけれど、
体の寒さが居眠りさせない。
ぽっかり口あけ流れる雲が
ぽろぽろぽろと散りゆくさまを、
散ってはくっつくその繰り返しを、
そしてけれども同じ雲には
二度とはならない無常の哲理を、
ぽっかりポカポカ見ていたんだ。
あくびをこらえて(向いてないや)と、
大きく伸びをし、座り直した。
膝を抱えて、川面に浮かぶ
桃のジュースの空き缶が、
同じところで沈んでは浮き、
浮いては沈むさまを見ていた。
(なんか、雲と、かわらんねぇ)
春が来たのか、まだ来てないのか、
迷いに迷った日の午後のこと。
趣味は空き缶、眺めること。
と公言して、
変人扱いされるのも
悪くはないなぁと、
思ってやっぱり無理があるなぁと、
自称詩人さんは思ったのでした。
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