信号待ちでみた白い夢/秋葉竹
 

左の信号機の下
信号待ちの黒い傘のなかに
髪の毛乱したあの女がいる

憎しみの眼つきで
フロントガラスごしに
僕の目を焼こうとする

さらさらと降る小雨のなか
小さな涙粒のような
規則性があるという
過去のふたりの距離を思い出し

僕は初めて
さようならを言ったデスマスクを
血まみれにするイメージを
サイドミラーを覗きこむ僕の顔にみつける

むろんそんな女は実在しない
あの女の人は
見も知らぬ信号待ちのOL
ただ青になるのを待っているだけの。

しなやかな足で
足早に横断歩道を渡って行く
気づけば小雨は
やみかけていた

薄い
白灰
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