今宵もまた黄金虫は輝く/坂本瞳子
目蓋の重みにもはやこれ以上は耐えられないというとき
せばまる視界の遠い向こうにボンヤリと輝くあれは
きっと黄金虫に違いない
徐々に眠りに堕ちながらも脚はそちらへと歩み
腕はそちらへと伸ばされ
声にならない叫びをあげるために口を開いてはみるけれど
涎さえ流れず
人混みを避けようとしてつんのめってのた打ち回って
目眩を覚えて吐き気を催し
またもや自己嫌悪に陥る
そんなことの繰り返し
今宵もまた更けてゆく
救いの光などはもたらされず
深みへとなだらかに滑らかに
滑り落ち続けるところ
左の手首あたりが痙攣し
正気に戻る
そして苦笑い
独りほくそ笑む
丸い月が天高く仄白い光を放つ
そんな夜のこと
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